古代の生命観1

1) 天地創造神話

 日本の神話 そもそも宇宙の初めに,混沌とした根元がすでに固まって,生命の形が現れなかった頃の状態は誰にもわからなかった。しかし天と地が初めて分かれると,三人の神(アメノミナカヌシ,タカミムスビ,カムムスビ)が万物創造の初めとなり,また陰と陽の二気に分かれると,二人の神(イザナギ,イザナミ)が万物を生み出す祖神となった。そして,イザナギ・イザナミの二神が国生み・神生みをしたとされている。生物の創造に関してははっきりとした記述がない。

 中国の神話 日本神話と同じように,宇宙の最初は混沌とした状態にあったとされている。その中から,盤古という巨人が生まれて,天と地を上下に押し広げた。やがて盤古が死ぬと,その死体から太陽,月,山,星などが生まれた。生物は,女媧という女神が創造したとされている。 

 韓国の神話 天地はまだ離れていなかった。ある日,天が上の方に上り,地は天の圧力で下に降りて平たくなった。平たくなった大地から,一番最初に人間が生まれ,人間が生まれた後に,動物や植物などの生物が生まれ,さらに万物が生まれたとされている。

 インドの神話 「リグ・ヴェーダ」の中のブラフマナスパティを創造神とする賛歌の中には,「有は無より生ず」と述べられている。「無」とは混沌状態を表していると考えられる。この神は鍛工のように万物を鍛造したといわれている。また,太初に茫洋たる原水があり,その中にヒラニヤ・ガルバ(黄金の胎児)がはらまれ,創造神が生まれたという賛歌もある。中国の盤古のような,原人プルシヤという超越者の死体から万物が誕生したという記述もある。しかし生物の創造に関しては,やはりはっきりとした記述がない。

 ペルシアの神話 天地とその間にある万物は六段階により,365日かけて創造された。空が40日,水が55日,地が70日,植物が25日,動物が75日,人間が70日かけて創造され,各創造の後に5日ずつの休息がとられた。

 ギリシアの神話 世界の初めには混沌の淵カオスが生まれ,大地ガイアと地底の暗黒界タルタロスと愛エロスが生まれた。次にカオスから闇エレボスと夜ニュクスが生まれ,エレボスとニュクスから,天上の浄光アイテルと昼ヘメラが生まれた。このようにして神々が生まれてきた。生物の創造に関しては,やはりはっきりとした記述がない。

 ヘブライの神話 地は混沌であって,闇が深淵の面にあった。神は1日目に光と闇とを分け,光を昼と呼び,闇を夜と呼んだ。2日目に神は空を創造した。3日目には水を一ヶ所に集めて,大地と海を創造し,大地に植物を生えさせた。4日目には太陽と月を創造した。5日目には魚,鳥を創造した。6日目には地上に住む動物と家畜,そして人間を創造した。

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